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アミロイドβ?
アミロイドβは、アルツハイマー型認知症に見られる老人斑の大部分を構成しているたんぱく質で、健康な人の脳にも存在し、通常は脳内のゴミとして短期間で分解され排出されます。
しかし、正常なアミロイドβよりも大きな異常なたんぱく質ができてしまうと、排出されずに蓄積してしまうのです。
実は認知症を発症する20年も前から脳に溜まり始めていると言われています。
蓄積したアミロイドβは、脳細胞を死滅させると考えられています。記憶の主体である脳細胞が死滅すれば物忘れが起こると考えれば、イメージしやすいでしょう。
また、アミロイドβは血管の壁に沈着することもあり、脳出血の原因となることもあります。
かつてはアミロイドβの蓄積を確認するには、死後の脳組織を顕微鏡で観察するしかありませんでした。
しかし、今ではアミロイドPET(アミロイドイメージング)という検査により、画像診断で生きている人の脳内のアミロイドβの蓄積量が分かるようになりました。
アミロイドβはなぜ溜まってしまうのか
体を作る栄養素たんぱく質は、体内でアミノ酸に分解され一旦肝臓に蓄えられます。
そこから各臓器に送られ、アミノ酸からそれぞれの臓器に必要なたんぱく質が作られます。
アミロイドβは、脳内で作られたたんぱく質が分解されたもので、40個前後のアミノ酸からできています。
分解される時の微妙な切れ目の差で、無害で排出されやすいものと、毒性が強く、たんぱく質同士が互いにくっついて脳に溜まりやすいものに分かれます。
蓄積のメカニズムについては、まだ完全には解明されていませんが、加齢などにより分解や排出がうまくいかなくなると、毒性の強いアミロイドβが溜まり始めると言われています。
最新の研究では、アミロイドβの蓄積をアルツハイマー型認知症の始まりとする「アミロイドβ仮説」に基づき、毒性の強いアミロイドβの産生を抑え、分解や排出を促す方法が研究されています。
アミロイドβ仮説とは?
アルツハイマー型認知症の発症について以下の仮説で、2010年に提唱されました。アルツハイマー型認知症の原因と考えられている仮説の中でも、現在最も有力と言われているものです。
1.たんぱく質を分解する酵素の働きの変化により、蓄積しやすいアミロイドβの割合が増えて脳に溜まり始める。
2.アミロイドβの毒性により、神経細胞やシナプス(神経細胞同士を繋ぐネットワーク)が傷つけられ、糸くずのような神経原線維変化を起こす。
3.傷ついた神経細胞が次々と死んでいくことにより、脳が委縮し認知症を発症する。
現在の新薬開発の主流は、このアミロイドβ仮説に基づいていますが、他にもアリセプトやレミニールなど、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬開発の元となったアセチルコリン仮説やオリゴマー仮説などがあります。
アミロイドβ仮説を否定し、別のアプローチをする研究もあります。
現在、アミロイドβをターゲットとする研究が進められています。
2007年に開始されたアルツハイマー型認知症研究プロジェクトJ-ADNI(ジェイ・アドニ)では、アミロイドPETにより、生きている人の脳のアミロイドβ蓄積量の変化を長期にわたり追っているところです。
新薬では、開発中の抗アミロイドβ抗体「アデュカヌマブ」が臨床試験の最終段階に入っており、期待が高まっています。
アミロイドβは特にアルツハイマー型認知症にとって大きなキーワードです。
認知症の予防の鍵はアミロイドβだけではないことが分かっており、脳の使い方を工夫
する予防法の研究も、盛んに行われています。
アミロイドβ仮説についてですね。
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